群竜伝を読む。

d0002395_23101913.jpg 群竜伝(週刊少年マガジン/1972年~連載)を講談社コミックス(全4巻)で通読。ここまで来るのに35年を要した。
 「男一匹ガキ大将」で少年漫画界の頂点に立った本宮ひろ志(連載当時25歳)は、舞台を集英社から講談社へ移しても衰えぬパワーを炸裂させている。
 プロ野球界から冷たくゴミのように捨てられた選手を父に持つそれぞれの子供ら9人は、般若心経を唱えながら全身にガソリンを浴びて炎上死した竜馬(りゅうま。9人の主人公の一人)の父親のプロ野球界への怨念を抱えてこの世に生を受けた。
 やがてこの9人の子らは謎の老人によって引き取られ、背中に竜の隠し彫り(刺青)をほどこされ、竜馬以外は里子に出され各地に散った。
 この刺青は、全身が燃え上がるように熱くなった時、背中に浮かび上がって来るのだ。
 そして、この9人の竜の子が集まる時、一匹の巨大な竜になる。
 この作品は、いわば復讐譚であり青春群像ドラマなのである。

 さて、ストーリーは、般若心経を唱えながら炎上死する父親のそばで誕生した竜馬が、謎の老人の手によって連れ去られるシーンに続いて、9人の主人公の一人である白井が、城のある地方の高校「岩鉄(がんてつ)高校」に落雷とともに転校して来るシーンへと展開する。
 当初、物語は、この白井が背中に竜の刺青を背負った残り8人の仲間を探すために、岩鉄高校のドグサレ野球部を再建しながら野球軍団を組織して甲子園をめざしつつ、3人目の主人公の滝も登場しながら、やがて集まった9人が、1チームずつのチームを編成し、9チームが甲子園に乗り込み大暴れすることを目標に展開するはずだったのである。
 しかし、気がつくとストーリーは、竜の刺青を背負った残りの仲間は、9人の大将となるべき資格の竜の頭の刺青を持つ男も含めて、実にご都合主義的に集ると、甲子園をめざす話はいつの間にか消えてしまい、9人の仲間は同年代の男がオーナーとなったプロ野球の新チームのメンバーになってプロ野球界に挑戦する話に変じていたのだった。
  このオーナーは、背中に金色の玉の刺青を背負っており、10人目のメンバーとして9人を買い取り球団を編成したのである。その名も「竜軍」だ。
 一方、プロ野球側は、彼らのこのチーム「竜軍」の参入を阻むべく、セ・パ両軍のオールスターを集めた黒いユニフォームの覆面新球団で迎え撃つ。
 試合は、何と45連続ホーマーで「竜軍」の大勝利となったのだ!!
 ほとんど破れかぶれのやっつけ仕事という感じだ。
 
 で、オチはどうなったかといえば、試合終了後「竜軍」オーナーの若い男はプロ野球コミッショナーのもとを訪れ、「竜軍」とセ・パ両軍のオールスター軍との戦いの賭けに勝ったことを盾に(えーーーーっ!! そんな賭け話、それまでストーリー上に全然出て来なかったじゃん!!)百億円を要求する。
 これにブチ切れた竜の頭の刺青を持つ大将は「竜軍」オーナーをブチのめし、オールスター軍の一人も突然現れて、これまたコミッショナーをブチのめしちゃうのだ。
 大将は最後にこういう。
 「おれたちはこれでおやじの怨念からはなれることができた。プロの一線級をたたきつぶしたことでな・・・。おれたちはこれからなんにもしばられることなく・・・。へっへへ 気楽に生きていけるんだ。しょしてこんなにすばらし仲間もできた。すべてあんた(「竜軍」オーナー)のおかげだ。さあ、いこうで みんな!」
 「おお~~~(全員で)」
 わあっはは・・  ははは・・  はっはは・・
 という高笑いで歩き出す9人の姿でこの作品は終わる。

 いいな~、勢いだけで描き始めて、途中で破綻が見え始めると、ご都合主義ででたらめなオチをつけて垂直落下式で話を終わらせる25歳の本宮ひろ志だ。
d0002395_23113157.jpg そして、ボクがこの作品をあきらめずに愛し続けていたのは、9人の「竜軍」の」背中に彫られた刺青が、本宮作品の荒々しいタッチの中では、それと対照的にひときわていねいに点描で描かれていたからなのだった。(実際、点描はものすごく手間と時間がかかり実に大変なのだ。なにしろ描き手はひたすら紙にペン先で点を打ち続け、絵が完成するまで気の遠くなるような作業を繰り返さなければならないのだ。)
 全編を通じて、9人の竜の刺青を手を抜かず点描し続けた、画家としての本宮の意識の高さ(もちろんアシスタントの手によるものだろうが、プロデューサーとして、プロダクションの〝総大将〟としての意識の高さ)、いわば「漫画家魂」がボクを惹きつけて止まないのだ。

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d0002395_23114968.jpg ←1972年、中学3年生になったボクは、友達のアベちゃんから週刊少年マガジンのこの号をもらった。
(1972年5月28日号 №23/90円)







d0002395_23121180.jpg ←そして、そこに掲載されたこの作品の、この号のラストのコマのその先を、ボクはずっと読みたかったのだ。
 35年の時を経て、きょうこの思いは果たされた。
 ちなみに、この号のこの作品のキャッチは「重戦車の迫力でせまる大河野球ロマン!!」とある。
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by mimiokun3 | 2007-01-13 18:55 | その他


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